2011/12/22

朝の風景/彼の目覚め-1


カーテンの隙間から冬の朝日が差し込んで、僕の塞ぎきった瞼をじんわりと赤く染め始める。その暖かみに反応するように、僕の脳の奥底にひそんでいる、素潜りの名人が気圧に逆らわないように、ゆっくりとその光に向かって上っていく。
そうして目を覚ました僕は、そのままぼんやりと冬特有の雲ひとつない洗い立てのなシーツのような青空を眺めていた。

僕は静かに目を覚まし、静かに空を眺めていた。

足元で寝ていた犬がごそごそと僕の顔のところまで上がってきて、何かを語るように耳元に鼻を押し付けてきた。
もちろん僕には何を語りたいのかは分かっているのだけれども、
それでも毎朝、足元で寝ているのにも関わらず、いつも僕の目覚めに気がつく犬に感心して、
世界の目覚めには、全く関心がないといった感じで、静かに寝息をたて続ける彼女のおでこに軽くキスをして、冬の冷気を侵入させないよう少しだけ布団をずらし、ベットから出た。

振り返ると相変わらず同じ体制で寝ている彼女の顔の一部に朝日が降り注いでいた。
何ものも含まれていない冬の冷静な光が、彼女の透けるような白い肌をそのまま含み、持ち去ってしまうのではないかという不安にかられ、僕はカーテンをきちっと閉め直し、台所へと向かった。

僕はまず、静かに先回りしていた犬にビスケットを何枚かあげ、彼が食べている間にフラネルのガウンをはおり、やたら長い彼女のモヘアのマフラーを首に巻きつけて、厚手のウールの手袋をつけ、静かに扉を開けて犬の散歩に出かけた。


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